ボビンレースと言われてフィンランドを思い浮かべる人は、まあ、ほとんどいないでしょうね。
そんなフィンランドにも、ボビンレースの伝統はあるのですよ。主なタイプは3つ。
まず、カレリア地方とフィンランド湾の群島に伝えられてきた nyytinki(ニューティンキ)といわれるボビンレース。そして、Orimattila(オリマッティラ)市の Heinämaa(ヘイナマー)という地域に伝わってきたボビンレース。さらに、Rauma(ラウマ)のボビンレースです。
Nyytinki
一般に思い描くであろう繊細なボビンレースのイメージとは、だいぶ違うかもしれません。太目の糸が使われ、比較的単純なデザインです。
他の地域のボビンレースでは、型紙をつくり、それにそってレースを織っていくのですが、nyytinki では型紙を使わず、格子柄や縞柄の布を利用して織っていきます。
こちらのページ↓の解説はフィンランド語ですが、ボビンレースを織っている写真があるのでリンクしておきます。
nyytinki というのがどんなレースなのかについては、こちらのページ→Nyytingit | Tekstiilikulttuuriseuraの写真が参考になります。
産業として発達したというよりは、自家用の布の装飾するために使われてきたものなのでしょう。衣服や手拭などに縫い付けられていました。
ヘイナマー(Heinämaa)のボビンレース
ボビンレースのイメージにほぼマッチするであろうレースです。ラウマのレースとほぼ同じようなタイプですが、比較的太めの糸を使います。そのせいでしょうか、 ヘイナマーのボビンはラウマのボビンよりもやや大きめです。また、ヘイナマーで使われてきたボビンレース用の台は皮張りです。
ラウマ(Rauma)のボビンレース
フィンランドのボビンレースで一番有名なのは、ラウマのものです。
ラウマ市の旧市街地がユネスコの世界文化遺産にもなっているので、フィンランドへいらしたことがある方の中には、ラウマ市に立ち寄ったことがある、という方もいるかもしれませんね。
この地域では、フィンランドのボビンレースの中では一番繊細なタイプのものを生産していました。カレリア地方とは違い、ラウマのボビンレースは、完全に産業…収入を得るためのものでした。
ボビンレースは様々な使い方がされてきたでしょうが、下の写真は、かつてのフィンランドでの代表的な使われ方の一つ。
Tykkimyssy(トュッキミュッシュ:女性の被り物の一種) 1790年頃? Helsingin kaupukunkimuseo(ヘルシンキ市博物館)所蔵 画像元:myssy; tykkimyssy, koppa; naisen | Helsingin kaupunginmuseo | Finna.fi ライセンス: CC BY 4.0 |
18~19世紀に使われていた女性の被り物です。レースが、そのつばの部分に使われています。
ラウマのボビンレースは(少なくともフィンランドでは)有名だからでしょう。インターネット上の動画をチェックしていたら、ラウマのボビンレースに関する昔の映像が見つかりました。次回紹介しますね。
2 件のコメント:
あー・・・、なるほどねー。
単に飾り物というだけじゃなく、その土地土地での用途が違うからなのでしょうか。
収入のためにというのであれば、高価に売れるものをという方向なのでしょが、生活範囲で使うものとなれば糸も必然太くなるのでしょうね。
レースと一口に言っても、多様なものなんだなーと思いました。
いずれのタイプでも材料は亜麻糸なのですが、そもそもフィンランドでは繊細な亜麻糸が紡がれていなかったんじゃないかとも思います。
ラウマでは繊細なレースも作られていたけれど、そういうのに使う糸は国外産だったみたい。
フィンランドだけでもこれだけの違いがあるので、よその国や地域では、もっともっとバリエーションがあるんだろうなあ…
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