手織り・染色・手紡ぎ等々、手仕事の記録です。フィンランドでのものづくりについても紹介しています。フィンランド発信。

オーバーショットの組織図・織り方図を描いてみる③ ~緯糸の浮きの長さをそろえる~

前々回( オーバーショットの組織図・織り方図を描いてみる① ~プロファイルドラフトと綜絖通し順~)、前回( オーバーショットの組織図・織り方図を描いてみる② ~タイアップと踏み順~ )の続きです。

前々回の綜絖通しに加えて、前回はタイアップも踏み順も描き終えました。ですから、それをそのまま織ることは可能です。でもそうすると、柄になる緯糸の浮き糸が左右対称になりません。


平織りの踏み順を入れていない図でみると…


どうでしょう、花柄の左右の花びら(っていうのか?)の大きさが違うの気になりますか? それとも気にならない?

参考までに、この部分、プロファイルドラフトではこんなでした。


柄を織り出す糸の浮き(経糸の上を渡っている糸)の長さを左右対称にそろえなければいけないという決まりはないです。そろえたければそろえればいい。それだけの手間をかける必要がないと思えばそろえる必要はない。

ダーラドレル(daldräll)という言葉をご存知ですか?オーバーショットのことをスウェーデン語でそういいます。

daldrällで画像検索すると、柄を織り出す糸の浮きの長さがアンバランスのものが見つかる確率が高いです。

一方 overshot weave で検索すると、浮きの長さのバランスがとれているものがほとんど。

スウェーデンではプロファイルドラフトをもとに織ってきたけど、アメリカでは、プロの描いたオーバーショットの綜絖通し順付きのパターン集が早くから出回っていたから? …というのは、あくまでくうっけりの単なる憶測 。でも、十分あり得そうな話だと思いません?

いずれにしても、浮きの長さの違いが気にならないようなら、ここから先の話は無視してくださいませ。

緯糸の浮きの長さをそろえる

まず、綜絖通し順と浮き糸の長さの関係を観察してみます。緯糸1本だけ例に挙げて綜絖通し順と見比べると…


柄を織り出すペアが並んでいるとき、緯糸が浮いています。つまりこの例だと、通し順が 1 2 1 2 …と続いているところが緯糸が浮くところ。


他の浮きでも同じこと。だから、組織図を描かなくとも、綜絖通し順の並び方でそれぞれの浮きの長さが分かります。

浮きになる部分をそれぞれ囲んでみます。なんか分かりにくいですけど…


もともとは、下図のようにプロファイルドラフトの綜絖ひとマス(1ブロック)に、4本の経糸(綜絖)を入れたはず。


でも、浮きの長さは、この最初の4本セットとはちょっと違うものになります。それぞれの柄を織り出す綜絖が完全に独立しているわけではなくて、お隣さんと共有されているから。それで、浮きの長さもそろわなくなってしまうわけです。

揃えるためにはどうするか…といえば、単に余分なところをそぎ落とせばいい。例えば下の図で星印を付けた部分。


そして、こんなふうになりました。どうでしょう?こっちのほうがいい?それとも前の(この記事の2番目にある図)とあんまり変わらない?


これだと、柄の高さの方も再考したほうがよさそう。とはいっても、柄の高さは実際に織りながら最適な形にすればいいので(綜絖通しとは違って、事前に決めておく必要はない)、ここではこのままにしておきましょう。(新たに図を描くのがめんどくさい…(^_^;))

こうして柄の緯糸の長さをあとからそろえるのは、難しいことではないけれどちょっと手間ですよね。

オーバーショットの綜絖通し順と柄の緯糸の長さの関係を理解さえしてしまえば、後から修正するという面倒なことはしなくていいはず。プロファイルドラフトをもとにオーバーショットの綜絖通し順を描きだす時、最初から緯糸の浮きの長さがバランスよく配分されるように描けばいいんです。

とはいうものの、慣れないとややこしいじゃないですか。そんな中、綜絖通し順を眺めていて一つの方法を思いつきました。でも邪道です。そのつもりで軽く読み流してくださいませ。

3本を一まとまりとして綜絖通し順を描いてみる


プロファイルドラフトをもとにオーバーショットの綜絖通し順を書き起こした時、もとの1マスを4マス(4本の経糸)としました。ここでは、4本ではなく3本としてみます。具体的には
  • プロファイルドラフトで1番上のマスに印があれば、織り方図の綜絖通し順は121
  • プロファイルドラフトで2番目のマスに印があれば、織り方図の綜絖通し順は232
  • プロファイルドラフトで3番目のマスに印があれば、織り方図の綜絖通し順は343
  • プロファイルドラフトで4番目のマスに印があれば、織り方図の綜絖通し順は414

プロファイルドラフトの綜絖通し順が2マス横につながっているところでは、3本グループの間に1本加えています(赤い矢印のところ)。でないと、組織がくずれるので。

前の組織とは、柄の緯糸の浮きの長さが多少変わっている部分もあります。でも、この描き方だと、この段階ですでに浮きの長さのバランスがちゃんととれているんですよ。

今回、くうっけりにとってはこの方法で考えるのが一番楽だったので、最終的にはこれで組織図・織り方図を描きました。

ただ、これはほんとに邪道。こんな方法、本でも、ネットでさえも見かけたことないです。それに、どれだけ応用が利くかも不明。

少なくとも、プロファイルドラフトの綜絖通し順で、1番と3番、あるいは2番と4番が隣り合っているときには、このままは使えません。平織り組織がくずれます、たぶん。


オーバーショットについて長々と書いてきましたが、次回がとりあえず最終回…の予定です。

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8 件のコメント:

てこ さんのコメント...

とってもわかりやすいです。
今まで謎だったことがわかりました。
3本を一まとまりの考え方、好きです。
最終回、何が出てくるのか楽しみです。

karamatsu さんのコメント...

これで織れそうな気がするけど、まだだめ?

Kuukkeli (くうっけり) さんのコメント...

そう言っていただけるととっても嬉しいです😊
最終回はまとめのつもりなので、あまり新しい話は出てこないかも。
何かしら参考になりそうなことが書ければいいのですが…

Kuukkeli (くうっけり) さんのコメント...

はい、織れます、これで。
でも私は、この後またちょっとだけ綜絖通し順をいじっちゃいました^^;

Takemomo さんのコメント...

まずは「なにがわからないのかわかるように」なります。
このまま通したら織れるのなら、理屈抜きで真似させていただこうと思います。

Kuukkeli (くうっけり) さんのコメント...

どういうことが分からないのか分かれば、そのことについてここで何か書けるかもしれません。
疑問・質問なんなりとどうぞ。
答えられるかどうかは分からないけど…(・・;)

いずれにしても、今回の話はややこしかったんじゃないかと思います。

どうぞどうぞ、真似してください。
あ、でもその前に、実際にはどんな感じに織れるのか知りたくないですか?
次回、写真をアップするつもりなので、それが気に入ったら織ってみてください。

オーバーショットは、本にもインターネットにも素敵なパターンがいっぱいあるので、どうせ織るなら、気に入ったものを選ぶのが一番ですよ^^

Takemomo さんのコメント...

ぜひお願いします(⌒▽⌒)!

Kuukkeli (くうっけり) さんのコメント...

さっきアップしましたよ~
見てやってくださいませ ^^

@tapionokuni