手織り・染色・手紡ぎ等々、手仕事の記録です。フィンランドでのものづくりについても紹介しています。フィンランド発信。

綜絖が下方に動く機

ちょっとした試し織りには、小型の機の方が何かと便利。

そんなわけで、今回使ったのは、小さめの機。
この機については、以前にもちょっと記事にしたことがあります。(過去記事:こんな機もあります

ところで、フィンランドで一般に使われている機は、水平天秤式のカウンターマーチ。

綜絖を動かすための装置(天秤)は、機の上部についておりまして、


必要なタイアップをした後ペダルを踏むと、こうして装置が動き、


ペアの天秤がV字だと綜絖は上がり、ハの字だと綜絖は下がります。このように、ペダルを踏むと、綜絖は、上か下かのいずれかに動くことになります。

一方で、今回使った機では、綜絖を動かす装置の部分がこうなっています。


天秤装置と似てはいますが、ペアの木片(このあと「ジャッキ」と呼ぶことにします)が中央でつながっており、さらに、ペダルを踏まない状態だと、V字に固定されています。

横にわたっているブルーの部分は、ゴムです。ジャッキがV字に保たれているのは、このゴムがあるから。

必要なタイアップの後ペダルを踏むと、ペダルにつながれた綜絖のみが下がり、その綜絖とつながったジャッキは山形に。ゴムが伸びるので、それが可能となるわけです。


そして、ペダルから足を外せば、山形だったジャッキは、ゴムの弾力でV字にもどり、綜絖も元の位置に戻ります。

すなわちこの機では、機にかけられた経糸は、下側にしか動きません。

いずれにしても、この仕組みは、実物を一目見ればすぐわかるような単純なものです。くうっけりの下手な説明がややこしいだけの話。

経糸が沈む場合だけ綜絖とペダルをつなげればいいので、タイアップも楽です。

ただ、個人的には、綜絖が一方にしか動かないシステムの場合、この機のようないわゆる下口開口よりも、一般にジャッキ式織機といわれている上口開口の機の方が、いろいろな意味で使いやすいだろうと思います。だから多分、このタイプの機は普及していないんじゃないかな…

ところで、この機の販売者は、このシステムの名称を säästönyörtysjärjestelmä といっていました。「コード節約式」とでも訳しましょうか。

フィンランドならではの命名でしょうね。こちらでで多く使われている天秤式に比べると、この「コード節約式」では、タイアップ等に必要なコードの量が格段に少なくて済みますから。さらに、やはり必要なコードの量が天秤式より少ないであろうジャック式織機は、フィンランドではほとんど使われていないということも背景にありそうです。

蛇足になりますが…

じゃあ、ジャック式織機のような機はフィンランドで何と呼ばれているかというと、salonkikanngaspuut。「サロンルーム(サロン織機)」というような意味。フィンランドで一般に使われている機は大きく高さもあります。でも、ジャック式織機は背が低くて圧迫感もなく、従来の機より小型で、サロンにも合うような機だということなんでしょう。

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@tapionokuni