手織り・染色・手紡ぎ等々、手仕事の記録です。フィンランドでのものづくりについても紹介しています。フィンランド発信。

亜麻糸とテックス番手

最近手に入れた亜麻(リネン)糸です。


向かって右が無漂白、左側の糸は漂白してあるものですが、完全漂白ではなくて4分の1漂白というもの。

麻番手でいうと12番、テックス番手でいうと 137 tex の糸です。

ところで、ブログで亜麻糸を紹介する時に、麻番手を使ってはいますが、くうっけりが実際に利用しているのはテックス番手のみです。

フィンランドで手織用の糸として販売されているものには、テックス番手が使われているのですよ。亜麻糸の場合には、麻番手とテックス番手が併記されていることが多いですが、他の素材だと、テックス番手のみで表示されていることも珍しくありません。

フィンランドのような小国は、「この単位を国際標準にしましょうよ」といわれれば、それに素直に従うのかもしれません。それとも単に、実用性の観点から、テックス番手を取り入れているのかな…。
*番手については、例えばWikipediaの「糸」の項目にある「糸の単位」の部分に簡単な説明があります。

というのも…

メートル法が定着しているフィンランドで、織りに必要な糸の量を計算するときに、麻番手や木綿番手を使うのは、実用的ではありません。これらの番手はメートル法ではなく、ポンドやヤードが基準となっていますから。

ウール番手はメートル法なので計算はしやすいですが、いずれにしても、素材によって番手が違うというのは不便な話です。

たとえば、フィンランドの織りの専門学校の生徒さんたちの立場になってみましょう。必ずしもみんながみんな、計算が得意というわけではありません。学校では、これから織る作品にどれだけの糸が必要なのかという計算を否応なくすることになるわけですが、その時に素材によって計算が違うのは、生徒さん泣かせです。

でも、全部の素材をテックス番手にしてしまえば、不必要な混乱を避けることができます。織用の糸の小売店が、従来の糸番手との併記でもいいから、テックス番手を表示すれば解決する話です。

実際、フィンランドの学校で織りを教えてもらっていたころ、必要な糸の量を計算するための公式(?)として教えられたのは、テックス番手を使ったものだけだったし、それだけしか知らなくても、必要な糸を購入する際にまったく不便はありませんでした。

それにしてもなぜ、全素材共通のテックス番手が、よその国ではあまり普及していないのでしょう?せめて併記ぐらいすればいいのに。大国(←ポンドやヤードを未だに使っている国々)の陰謀か???

5 件のコメント:

i.asaoka さんのコメント...

こんにちは 番手の話、楽しく読みました。

織物は、昔からの続く産地がありますから綿織物の産地は紡績から撚糸、織、加工まで・・・綿ばかり+少々合繊。毛織の産地や化学繊維の産地も同様。
未だに、尺で規格書を計算している工場や尺に近い(?)インチ表示がスタンダードだったりすることもあるのです。ですから、ヤードとポンドの綿番手もそれほど違和感ないのだろうと思います。産地ごとに使う番手が違っても、そこで働く人にとっては、さほど不便さはなく、昔からの資料がわかりにくくなるほうが大変なことなのだろうと思います。

日本の手織では、あまり番手(太さ)について、習ったり、使ったりしないようです。だから、共通番手?を一生懸命探して、勉強するひとが出てくるのでは?どうせなら、世界共通のテックス番手を使うべきだと私も思います。

染織の大学とかでは、たぶん、現場で働くデザイナーや実生活に役立つ布つくりよりも工芸作家とかアーティストを育てる教育のがメインになっているのかなぁ・・・なんて思ったりしています。

Kuukkeli (くうっけり) さんのコメント...

こんにちは。
コメントをありがとうございます。

昔からずっと使って定着しているという背景があり、伝統をふまえて生産している場合には、あらたに別の番手を取り入れる必要性も確かにないのでしょうね。

どの番手にしても糸の太さをイメージする基準にはなるけれど、番手自体は長さと重さの割合を表す数字。何本よりかというぐらいは分かるけれど、それ以外の糸の特徴を特に表してくれるわけではないのですよね。最終的には糸自体を見ないと、経糸の密度も決められない気がします。

そんな番手が具体的に意味を成すのは、糸の使用量を計算する時じゃないかと思います。記事にも書きましたが、織りの勉強を始めたばかりの生徒さんたちにとっては、番手が統一されているととても助かると思うのです。

こちらの事情と日本の事情とでは、だいぶ違うところもあるのでしょうが、どんな作品を作るにしても、その作品にどれだけの糸が必要かというのは何らかの形で割り出さなければいけませんよね。

伝統の織物というのであれば、糸の使用量は決まっているのだろうと想像できます。でも、自由にデザインして何かを作るというときには、日本では一般に、用意すべき糸の量をどうやって算出しているのでしょう?…そんな疑問がわきました。

i.asaoka さんのコメント...

いつも話が発展して興味深いです。

番手自体は、割合を表す・・わかりやすい表現ですね。

たぶん、日本でも、番手を使って換算するというやり方だと思います。

アメリカの本の巻末には、20/2綿は、1ポンドあたり8400ヤード。20/2ウールは・・・・という表があります。
このような本誌でも使った糸の一覧表があれば、「そもそも何番手だから・・・」と換算の仕方を考えなくてすむのでは?
日本では、編糸と兼用糸や多本数撚りにした糸もあるので、糸ごとに大体の長さを表記してあると便利では?
ということで、必ずしもそれぞれの番手の成立ちを理解して計算に使う必要はないのかもしれないと思いました。

未精錬の糸の場合、色糸の場合、マフラー程度の大きさ場合、残り糸を使う場合、初心者用、中級者用・・・ケース別に考えられそうな気もします。

ところで、フィンランドの織の専門学校では、手織のテキストブックがあるのですか?
授業用で使うだけでなく、卒業後も素材や織の知っておくべき基本知識の目安として読み返して使えるような本のことなのですが。

Kuukkeli (くうっけり) さんのコメント...

こんばんは。
返信をありがとうございます。

確かに綛やコーンにある糸の長さがわかっていれば、番手を使う必要もありませんね。

ケース別…というのもなんとなくわかる気がします。

テックス番手がまだフィンランドで使われていなかった時代の教本を見ると、番手を使うものも使わないものも含めて、いくつかの計算方法が紹介されています。それに、自家製の糸を使っていた時代には、また独自の算出法があったみたいです。

手織のテキストブックといわれて真っ先に思い浮かぶのは、織りの組織について書かれた本です。でも、それだとasaokaさんが考えていらっしゃるのとはまた違うのかしら…

いずれにしても、そんな本たちも少しずつブログにアップしていきたいと思います。少しは参考になればうれしいのですが…

i.asaoka さんのコメント...

ありがとうございます。
期待しています。

@tapionokuni