フィンランド語で書かれた、最初の織りの組織に関する本は、1911年に出版された「Sidosoppi」という本だとか。
写真にあるのはその改訂版で、1927年に出版された第4刷です。表紙にある挿絵は…小さくて見にくいとは思いますが…フィンランドで昔使われていたタイプの手織機。
著者の専門は、手工芸ではなく工学のようです。そして、本文自体は機械織りにも手織りにもこだわらない内容。生産法が違っても、組織の考え方は同じですしね。ただ巻末には付記として、手織者向けのページが添えられています。
この、手織者向けのページに取り上げられているのは、2組の綜絖を使う方法や、いわゆるスケルトンタイアップで織る方法、あるいはピックアップなどの手織独特の技法です。加えて、昔から手織機で織られてきた伝統の織物。
ところで、今の本だったら、たくさん挿絵や写真があったりしても、わざわざ宣伝?しないでしょうが、この本には406枚の挿絵があることが、扉に明記されています。そんなところにも時代を感じます。
で、その挿絵入りのページの一部…平織、そして綾織りについて説明されている部分。
古い本ではありますが、最近の本では取り上げられていないことも書かれているので、気に入っています。例えば、半綜絖を使ったもじり織り…フィンランド語で書かれた本の中で、このもじり織りについての記述があるのは、もしかするとこの本だけかもしれません。
それぞれの組織の、布としての特徴だとか、その組織がどんな用途の布に使われるかということについての記述もあるし、説明の仕方が最近の本とは違っていたりもして、それもまたおもしろい。
用語もまた興味深いのです。今一般に使われている用語の中には、この時代にはまだ使われていなかったものもあるようだし、逆に、今使われているものとは別の言葉が、この時代の組織の名称として使われていたり…
それにしても、フィンランド語でありがたいのは、日本語と違って100年ぐらい前の本も今の本も、読むときの難易度がかわらないということですね。
この本の初版と同時代…1910年に出版されたという「寛用機織法 前編」という本を、インターネット上で見つけて、ちゃんと読んでみようと思ってはいるのですが…
(http://www.cs.arizona.edu/patterns/weaving/books/jh_weav1.pdf)
今のくうっけりには、その日本語を読むのがフィンランド語を読むよりずっとやっかいで、根性が続かないのでした。情けない…
散歩にて
18 時間前
2 件のコメント:
さっそくにありがとうございます。
フィンランドの「Sidosoppi」・・・もちろん読んでみたいです。内容もさることながら、項目の記述順からも重要度や指向性がわかって、楽しいですもの。日本訳も英訳もなさそうで、残念。
「寛用機織法 前編」は、見てみました。古典、漢文は苦手ではないのですが、当用漢字とフリガナをつけたほうがよさそうで、まずは、200余枚をプリントアウトでしょうか。
こんにちは。
さっそく読んでくださって、ありがとうございます。
この本は当時、フィンランドには前例のなかった分野の本ですから、著者は、国外の数々の本を参考にしたようです。参考文献についての具体的な記述はありませんが、本の前書きに、とりわけ参考にした本の著者ということで、N. Reiser、Fr. Donat、H. H. Oelsner(多分、H.H.というのは間違いで、G.H.Oelsnerの事だと思います)らの名が挙げられています。主に参考にしたのはドイツ語圏の本ということなのかな?
「Sidosoppi」の本は読んでいただけないけれど、DonatとOelsnerの何冊かの本は、インターネット上で見ることができますよ。下記のアドレスからリンクが見つかるはずです。
http://www.cs.arizona.edu/patterns/weaving/books.html#D
「寛用機織法 前編」も実はこのページから見つけました。手織からは遠ざかるので記事には挙げませんでしたが、この本には「後編」「続編」もあり、やはり上記のページにリンクがはってあります。このページからは、他にもたくさん面白い本が見つかりますよ。
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