初版が1928年出版。そして新しいものは、1965年に出版の第10刷のようですから、かなり長い間使われていた教本ということになります。
写真にあるのは、第6刷版(1947年)です。表紙に機の絵がありますが、今の時代のフィンランドではあまり使われていないタイプ(開口装置は滑車とホース・筬框は上から下がっている)の機ですね。
こちら本の扉ですが
長い副題がついています。それによればこの本は、手織技術の基本を扱った本であり、専門学校や独学者のために書かれたとのこと。
扉からもうひとつ分かるのは、この本には写真とイラストが合計で345、その他に4枚のカラー写真有り…ということ。
ちなみに、カラー写真で紹介されているのは、「ryijy(ルイユ)」と呼ばれる、フィンランドの伝統織物です。
- 素材(繊維)と糸
- 織りの計画・デザインと必要な糸の量の計算法
- 道具・織りの作業
- 組織
素材の中で、特に詳しく書かれているのが亜麻についてです。種の撒き方から育て方、繊維の取り出し方等々…かつてのフィンランドでは、一番身近で重要な素材だったのでしょう。
次に詳しいのが羊毛。これもフィンランドの環境を考えると納得です。
(蛇足になりますが、日本では身近であろう木綿は、フィンランドでは多分育たない…昔からすべて輸入品。シルクも同様…そもそも桑の木が、この北の地では冬越しできないらしい)
糸番についても書かれていますが、この時代の本にはまだテックス番手については一切言及なし。テックス番手が普及し始めるのは、もっと後の時代になってからだったようです。
織りの計画等については、具体的な観点から書かれています。経糸の密度の決め方(綜絖の選び方)だとか、経糸の長さの求め方だとか、必要な糸の計算法だとか…
道具等について書かれている部分には、糸綜絖の作り方などもあります。今はもっぱらナイロン綜絖を使うので、織りをする人でも糸綜絖を作ったことがない人の方が多そう…くうっけりもそんな中の一人。
4つ章の中で、一番ページがさかれているのが、組織についてです。
フィンランドでは、この部分にだけ特化した教本というのもめずらしくありません(関連記事:織りの組織に関する古本)。それだけ組織の理解が重要視されていきたということなのでしょうし、その点は、この教本も例外ではないのでしょう。
平織と綾織りについて書かれているページの一部です。
イラストだけでなく写真が入っているというのが時代による進歩!? 前回の記事でとりあげた本には、イラストはあっても写真は一切入っていませんでしたから。
今の時代には必要ないようなことも書かれていますが、そういう部分がまた面白い。そして、組織以外のことについても書かれているのがうれしいかぎりです。フィンランドではなかなかないんです、このタイプの本って。
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