手織り・染色・手紡ぎ等々、手仕事の記録です。フィンランドでのものづくりについても紹介しています。フィンランド発信。

《NIISI》綜絖子

とっても久しぶりに、フィンランド語の織り関係の用語です。

niisi (複数形: niidet)綜絖子のことです。


フィンランドの手織り機で現在よく使われているのは、おそらく上の写真にあるようなナイロン綜絖子。何種類かのサイズあり。自分用のメモも兼ねて、フィンランドで手に入るサイズをここに書き出しておきます。(参照:Niidet | Toika Oy Verkkokauppa
  • 長さ 28㎝・穴 1.2㎝:フィンランドの高機で使われる一般サイズ
  • 長さ 33㎝・穴 1.2㎝:コンピュータードビー機など、綜絖枚数の多い高機用
  • 長さ 33㎝・穴 6.4㎝:ドロウルームなどでの地の組織を織りだすための綜絖
  • 長さ 54㎝・穴 1.2㎝:ドロウルームなどでの模様を作るための綜絖
  • 長さ 16㎝・穴 1.2㎝:ミニ織機用
  • 長さ 22㎝・穴 1.2㎝:テーブル織機用
  • 長さ 26.8㎝・穴 1.2㎝:サロン織機(ジャックルーム?)用
ちなみに、上の写真に写っている(自分が所有している)のは、上記サイズのうちの一番上と三番目です。

金属の綜絖子は、フィンランドの手織り機ではほとんどお目にかかりません。でも、一応手には入るらしい。
  •  長さ 26.8㎝・穴 0.8㎝:サロン織機用

以上、お店から購入できる綜絖子。でも、フィンランドでナイロン綜絖が普及する前に使われていたのは、自作の綜絖子です。

下の写真は、自分が使っている、凧糸で作られた綜絖子。


コットンが生育しない自然環境のフィンランドでは、凧糸が普及する以前の綜絖子の素材はおそらくリネン。博物館にもリネン素材の綜絖子の束が残っています。

niidet
綜絖子
制作年:1909年以前
制作地:Konginkangas
画像元:niidet | Suomen kansallismuseo | Finna.fi
ライセンス:CC BY 4.0

検索してみたら、博物館には紙糸製の綜絖子もありました。これは今まで見たことなかった! ネット上の情報では定かではないけれど、もしかするとコットンが手に入りにくかったころ(第二次世界大戦中)のもの? それとも、名称通り単なる見本?

Näyte; Niisinippu
見本;綜絖子の束
製作地:Lieksa
製作時期:20世紀
画像元:Näyte; Niisinippu | Pielisen museo | Finna.fi
ライセンス:CC BY 4.0

また、かつてはこんなつくりのものも使われていました。

niidet; niisivarsi
綜絖子;綜絖棒
製作時期:1942年以前
製作地:Syväri(現ロシア領)
素材:枝(上下の棒)・リネン糸(綜絖子)
画像元:niidet; niisivarsi | Suomen kansallismuseo | Finna.fi
ライセンス:CC BY 4.0

今一般に使われる綜絖子とは別な作り方がされているように見えます。写真からだとあまりはっきりせず断言できないけれど、上から糸を輪っか上にかけて、下からは別の糸でその輪っかに糸をひっかけて輪っかにしているように見えませんか? そして、それぞれの綜絖子は棒の背中でお隣の綜絖子とつながっている。

実際、フィンランドで昔、そんな糸綜絖は使われていたそうな。特に、東部にはその伝統が残ったらしいです。ただ、そのタイプの綜絖は平織りには問題ないけれど、複雑な組織を織るには向かない。その点、今一般に使われているタイプは、組織が複雑であっても一向に問題はありません。それで、その新しい?タイプの綜絖子が、フィンランドの西部から東部へと普及していったそうな。

ところでこの niisi という言葉、フィンランド人でも知らない人が意外なほどに多いです。それだけ「織り」というものが日常生活とはかかわりのないものになっているということなのでしょう。

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@tapionokuni