手織り・染色・手紡ぎ等々、手仕事の記録です。フィンランドでのものづくりについても紹介しています。フィンランド発信。

小説に描かれている手仕事 ~手紡ぎ~

このところ読んでいた本です。

Koko upea saaristolaissarja yksissä kansissaMaija on saaristolaiskodin tyttö, joka naitetaan kalastaja Jannen vaimoksi kaukaiselle Myrskyluodolle. Meren naapurina eläminen opettaa nöyryyttä ja vahvuutta, ja luodon karuissa olossa Maijasta kasvaa vähitellen sitkeä saariston nainen. Koskettavassa tarinassa on lämpöä ja konstailematonta kauneutta.Kirja sisältää yksissä kansissa Myrskyluodon Maijan koko tarinan: Tie Myrskyluodolle, Luoto meressä, Maija, Meren voimia vastaan, Hyvästi Myrskyluoto.
オーランド諸島のとある島を舞台にした小説です。描かれているのは19世紀。主人公が、離れ島で暮らす中で、強い女性へと成長していく、そんな話です。

女性である主人公の生活を中心に描いているからでしょうか。小説の中には、手仕事をしている場面が度々でてきます。くうっけりには、それがなかなか興味深かったのです。

そこで、小説の中で出てきた手仕事について、数回に分けてここに書き留めておくことにしました。

まず今回は、手紡ぎです。

時間さえあれば紡ぎをしているんじゃないかと思えるぐらい、小説には、手紡ぎをしている場面が多く描かれています。

どういうものを紡いでいるかというと
  • 魚網用の糸(麻)
  • 編み物用の糸(羊毛・ヤギの毛)
  • 織物用の糸(亜麻・羊毛)
  • 借地代として(羊毛)
漁業を営んでいる地域なので、衣服だけでなく、漁に必要な糸も紡いでいます。

また、当時は借地人は借地代として、金銭だけではなく一定の労働力も地主に提供しなければなりませんでした。主人公は離れ島に住んでいたので、自宅でできる労働をさせてもらっていたのですね。地主さんの家から、刈り取った羊毛を受け取り、それを糸にして地主さんに届ける、という形だったようです。

主人公が小さいころ(19世紀前半)には、コットンも家で紡いでいたという記述があります。でも、それはちょっと疑問。

主人公が大きくなった頃には、工場で紡がれた木綿糸を購入するようになったとあります。こちらは納得です。フィンランドで木綿の紡績が始まったのが、1828年ということですから。

ところで、小説に出てくる紡ぎの道具は、紡ぎ車とハンドカーダーです。

フィンランドでも東部のほうでは、スピンドルがかなり遅くまで使われていたと聞いていますが、小説の舞台はフィンランドの南西部。南西部と言えば、フィンランドの中でもヨーロッパ文化が早くに入ってきた地方なんですよね。スウェーデンの影響がより強い地域でもあります。オーランド諸島で話されているのは、フィンランド語ではなくスウェーデン語ですし。

小説の中の女性たちが、時間さえあれば手紡ぎをしているというのは、考えてみれば当然かもしれません。

家族が必要な衣服を作るためには、まず布が必要。布を得るためには、織らなければいけない。織るためには、まず糸が必要……

そういえば、「1人の織り子が1日に織るのに必要な糸の量を1日で紡ぐには、6人の紡ぎ手が必要」という話を、以前、別な本で読んだことがあります。

それにしても、布どころか糸ですら買う余裕のなかった時代の女性たちは、一生の間にいったいどれだけの糸を紡いだんでしょう?

2 件のコメント:

karamatsu さんのコメント...

あー、このテーマ、いつかネタにしたいと思ってました。
まだ長いスカートをはいていた時代の女性たちの手仕事シーンって、
そのバックヤードがどれほど過酷なものであったかを別にすると、
何とも言えない味わいと不思議があるように思います。
織るシーンはわずかしか見たことがないけど、紡いだり編んだり縫ったり、
身体全体を動かす仕事以外の時は、いつも必ずこういう手の仕事をしている
文中のシーンが大好きなんです。
続きを楽しみにします(*^^*)

Kuukkeli (くうっけり) さんのコメント...

からまつさんも好きなんですか、こういう話。
よかったあ、楽しみにしてくれる人がいて。

この本、手仕事シーンがちょくちょく出てくるので、きっとからまつさんの好みですね。
スウェーデン語とフィンランド語版しかなくて、お勧めできないのが残念です。

この小説の手仕事の中で、手紡ぎの次に多いシーンは、手織りなんですよ。
次回は、その手織りの話を書きますね。

@tapionokuni