織りをする人であれば、「織る」と「編む」とは明らかに区別できるものだけれど、一般にはそうでもないのかな…。「織る」という行為がそれだけ身近なものではなくなってきているということなのでしょうか。
実はフィンランドでも「織る」と「編む」が度々混同されます。ただ、フィンランド語の場合はちゃんと理由がある。そのことも交えながら、日本語の「織る」や「編む」に相当するフィンランド語をご紹介します。なお、今回ご紹介するのはすべて動詞。フィンランド語はやたらめったら活用形がありますが、見出しとして挙げているのは辞書に掲載されている形(第一不定詞短形)です。また、写真の解説文ではそれぞれ3人称単数形が使われています。
KUTOA
「織る」。
Kaarina Passila kutoo (カーリナ₌パッシラさんが織る) 撮影:Erkki Vuotiainen, 1960年 画像元:Kaarina Passila kutoo | Museovirasto | Finna.fi (CC BY 4.0) |
ただし日本語の「織る」とイコールではありません。機で「織る」はこれですが、網を作るのも "KUTOA" です。
laulaja Liisa Tomander kutoo verkkoa (歌手 リーサ₌トマンデルさんが網を編む) 撮影:1913年, エストニア 画像元:laulaja Liisa Tomander kutoo verkkoa | Museovirasto | Finna.fi (CC BY 4.0) |
日本語だと網は「編む」? さらに、蜘蛛が巣を作るのも "KUTOA" になります。
この言葉を「織る」の意味だけでなく、靴下やセーターを「編む」意味で使う人たちもいます。
tyttö kutoo (少女が編む) 撮影:Matti Poutavaara, 1956年 画像元:tyttö kutoo | Museovirasto | Finna.fi (CC BY 4.0) |
「織る」と「編む」が混同されてしまっているようで、個人的には好きではない使い方。でもこのことについては間違い云々ではなく、方言が背景にあるそう。詳しくは次項で。
NEULOA
「(棒針や輪針、ドールビンドニング用の針で)編む」。
tyttö neuloo (少女が編む) 撮影:István Rácz, 1959年 画像元:tyttö neuloo | Museovirasto | Finna.fi (CC BY 4.0) |
靴下やセーターを「編む」というときに使われる言葉です。でもこれ、もともとはフィンランドの東部で使われていた言葉。一方、フィンランドの西部では前述の ”KUTOA” が同様の意味で使われていました。
学校教育が整えられる中で言葉を統一しようとなったとき(100年以上前の話です)、機で「織る」は ”KUTOA”、棒針で「編む」は "NEULOA" と決められました。それ以降、織物や編み物関係の教科書では "KUTOA" と "NEULOA" が明確に使い分けられてきています。だから私もそうしているのですが…
世間では方言が根強く残っているみたい。私が今住んでいるのは、「織る」も「編む」も "KUTOA" という地域。区別してもらいたいとも思うけれど、方言じゃ仕方ないよなあ…。
VIRKATA
「(かぎ針で)編む」。
Vanha huivipäinen nainen virkkaa hirsitalon kuistilla (頭に布を被った老婆がログハウスのベランダでかぎ針編みをする) 撮影:Teuvo Kanerva, 1979年 画像元:Vanha huivipäinen nainen virkkaa hirsitalon kuistilla | Museovirasto | Finna.fi (CC BY 4.0) |
KOUKUTA
「(アフガン針で)編む」。
PALMIKOIDA
「組む」「編む」。
三つ編みとか四つ編みとかをするときの言葉。
Uljana Gavriloff palmikoi laukun nyöriä kuusikulmaisen kodan lattialla (ウルヤナ₌ガブリロフさんが六角形の家の床でバッグのひもを編む) 撮影:Karl Nickul, 1933年 画像元:Uljana Gavriloff palmikoi laukun nyöriä kuusikulmaisen kodan lattialla | Museovirasto | Finna.fi (CC BY 4.0) |
NYPLÄTÄ
「(ボビンレースを)織る/編む」。
nainen nyplää pitsiä (女性がボビンレースを織る) 画像元:nainen nyplää pitsiä | Museovirasto | Finna.fi (CC BY 4.0) |
SOLMEILLA
「マクラメ編みをする」。
VIITELÖIDÄ
「スプラング編みをする」。
フィンランド語での表現を色々調べていて、日本語の「編む」という言葉がかなり広い意味で使われているのだということに気付きました。そのうち「織る」も「編む」に侵略される⁈😱
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