手織り・染色・手紡ぎ等々、手仕事の記録です。フィンランドでのものづくりについても紹介しています。フィンランド発信。

【本】Kyynärä pohjaa, kortteli raitaa 〜フィンランドの裂き織りの歴史〜

フィンランドの裂き織りといわれて、真っ先に連想するのは、マットです。現代でも、裂き織りマットはごく普通に使われています。(関連記事:ラベル「マット」の投稿

フィンランドの裂き織りマットの背景が知りたくて、Toini-Inkeri Kaukonen著『Kyynärä pohjaa, kortteli raitaa―Riepukudonnaiset ja perinteiset lattiamatot (英題:A cubit of ground and a quarter of strip―Rag weaves and traditional floor mats)』(1998年出版)という本を読んでみました。

著者は、民族学者。フィンランドの、特にテキスタイルの歴史・文化を研究されていた方です。

書名にある「kyynärä (cubit)」は、ひじから指先までの長さを基準とした、昔の長さの単位です。フィンランドの場合だと、1 kyynärä は約0.594m。そして、「kortteli (quarter)」は、その4分の1―約14.8cm。

一言に裂き織りマットと言っても、そのデザインは、時代や作り手によってさまざまです。そんな中で、数多く織られていたデザインの一つが、地に横縞の入ったマット。そして、その縞の入れ方の目安として使われていた言葉が「kyynärä pohjaa, kortteli raitaa」(メートル法で言えば、「約60㎝の地、約15㎝の縞」)で、書籍名はそこからきています。

フィンランドの古くからの裂き織りとフロアーマットについて、その歴史や分布、製作法や使用法などについて書かれている本です。一般読み物というよりは研究論文。本文はフィンランド語ですが、英語のサマリー付きです。

写真が多く挿入されて、それをたどるだけでも面白い…昔のインテリアだとか、マットを織っている様子だとか…

内容についてはここでは触れませんが(そもそも、うまくまとめられそうにない)、裂き織りについてもマットについても、今まで全く知らなかったことが盛りだくさんでした。


参考までに、フィンランドの博物館が公開している写真の中から、裂き織りマットが写っている古い写真を載せておきます。先織りマットが写っている写真はいっぱいあるけれど、きりがないのでここには2枚だけ。本に載っていたものとは別の写真です。

Sofia Antila? järjestämässä komeroa Lapualla
ソフィア・アンナ(?)クローゼットを整頓中 ラプアにて
撮影者・年・場所:Kyytinen Pekka・1950年代・ラプア
画像元:Sofia Antila? järjestämässä komeroa Lapualla | Museovirasto - Musketti | Finna.fi
ライセンス:CC BY 4.0

次の写真はもっと古い。この時代にこれだけぎっしりマットを敷き詰めているので、なかなか裕福なおうちなんじゃないかな。
nainen kumartuneena kehdon puoleen
ゆりかごのほうにかがんでいる女性
撮影者・年・場所:Roos Ina・1907年・Tiukka
画像元:nainen kumartuneena kehdon puoleen | Museovirasto - Musketti | Finna.fi
ライセンス:CC BY 4.0

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話変わって…

フィンランドの国の人口は現在540万人余り…北海道の人口と同じぐらい。そう考えると、小さい国です。面積は北海道よりずっと大きいですけどね。

フィンランド語は、そんな国の公用語でしかありませんから、フィンランド語で書かれた本なんていうのは、世界的にみると、とんでもなくマイナーなものといえそうです。

でも、せっかくそんな本を見たり読んだりできる環境にいるので、それらの本にもっと親しんでみようと思うようになりました。そして、このブログにも取り上げていきたいと考えています。何しろ本の言語が言語ですから、何の参考にもならないとは思いますが、「フィンランドにはこんな本があるのだね」…ぐらいに受け取っていただければうれしいです。

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@tapionokuni