今回読んでみたのは、 『Suomen kansanomaiset nauhat(フィンランドの庶民の紐)』(1965年出版)という本です。著者は Toini-Inkeri Kaukonen――裂き織りの本と同じです(関連記事:フィンランドの裂き織りについての本を読んでみた)。
Toini-Inkeri Kaukonen著『Suomen kansanomaiset nauhat』より |
紐を作るのにも様々な技法がありますが、この本で取り上げられているのは、それら技法の中の代表的なもの4種です。その中でも特に、木製の綜絖枠を使って織った紐――日本語では「バンド織り」?あるいは、フィンランド語でそのまま「ピルタナウハ」と紹介されていることも?――が多く使われていたようで、そのタイプの紐について、より詳しく書かれています。
手作りの紐は、結婚式で花嫁からのプレゼントとしても使われていた…そんな習慣なども興味深いものですが、私にとって何よりも意外で印象に残ったのは、カード織りに関する内容でした。
カード織りというのはとても古いし、技法的に多くのバリエーションが可能だし、バイキング時代にも様々な模様の入ったカード織りの紐・バンドが作られていたらしいし…
だから、19世紀から20世紀初頭のフィンランドでも、多様なカード織りの紐があったのだろうと想像していたのです。
でも意外なことに、博物館等に蒐集されている19世紀~20世紀初頭のカード織りの紐は、デザインも単純で、幅も狭いものばかり。他の技法での紐に比べて数も少なく、製作・使用されていた地域も限られていたらしい。
フィンランドでも昔(11世紀とか12世紀とか)の墓地からは、幅広で複雑な模様の入ったものも発掘されているのだそうですが…。
綜絖枠を使って紐を織る技法(バンド織り)が中世時代にフィンランドに伝わり、複雑なカード織りは、その新しく入っていた技法に取って代わっていったのだろう、と著者はいいます。
時代が移り変わる中で、古いものが新しいものに取って代わっていくというのは、めずらしいことでも何でもないと思います。ただ今まで、カード織りとバンド織りの関係をそのようにとらえたことはなかった…というか、そんなことには考えも及びませんでした。
ところで、伝統的な生産・使用とは別に、19世紀から20世紀にかけて、カード織りの手綱作りが手工業として行われていたそう。カード織りの紐は、他の手法によるものよりも強度があるからなのでしょう。
今となってはもう、紐作りは生活に密着したものではなくなっていますが、趣味としては生きています。本やインターネットなどから、いろんな情報も得ることができ、豊富な素材も手に入る現代…紐作りを楽しむのには、とても恵まれた環境ですよね。
久しぶりにカード織りをしてみようかな…
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