手織り・染色・手紡ぎ等々、手仕事の記録です。フィンランドでのものづくりについても紹介しています。フィンランド発信。

【本】Kankaiden sidokset 〜織りの組織の本とkuvikas〜

織りの組織についてフィンランド語で書かれた教本のようなものは、くうっけりの知っている限りでは6冊。前々回の記事(織りの教本)で取り上げた本は、組織以外のことについても幅広く書かれていますが、それ以外の5冊は、組織のみに焦点を当てて書かれたものです。

今回取り上げるのは、Helvi Pyysalo著『Kankaiden(布の) sidokset(組織)』(Otava出版)という本です。

写真は第5刷、1970年出版の本。


時代が下って、装丁も簡素になっています。以前取り上げた教本はハードカバーだったのですが、これはペーパーバック。ですから、表紙が何かの拍子に運悪く折れてしまったりすると、悲しいほどにしっかりと痕がついてしまう…

この本の初版は出版が1950年で、1980年代の初めごろまで版を重ねていたようです。

中の雰囲気は、以前のものとあまり変わりません。

平織と綾織りに関して書かれたページの一部。


ちょっと目新しいのは、布の模型?!の写真も使っていることでしょうか。


以前取り上げた本では(織りの組織に関する古本織りの教本)、用語の一部が今使われているのとはちょっと違っていることがあって違和感を覚えましたが、この本ではその違和感はもうありません。今使われている用語は、この本が書かれた頃には定着してきたということなのでしょう。数々の組織名の中に「kuvikas」という名も登場しています。

kuvikas は、今のフィンランドではよく使われよく知られているであろう組織の一つです。でも意外なことに、この「kuvikas」という名称は、以前の教本には使われていませんでした。

組織自体はすでに、最初の組織の教本も取り上げてはいます。そこでは、緯糸で模様を織りだす組織の中の一つとして解説されており、組織の名称は特に挙げられていません。ドラフト図の書き方などについては詳しく書かれていますから、当時から重要な組織の一つではあったのでしょうが。

よく使われる組織であれば、教本では名前がついていなくとも、織りをする人たちの間では通称があったんじゃないかとは想像できます。でも真相は不明…

いずれにしても、めでたくこの組織に教本でも名前が与えられて、今はそれがすっかり定着しているわけです。

フィンランド国内だけでなく…

インターネットで「クビカス」とか「クヴィカス」で検索するとページが見つかりますから、日本でもこの名称を使っている方々がいらっしゃるということですね。

また、「kuvikas」で検索すると、英文のページなども見つかります。よその国でもこの言葉を知っている人は使ったりもしているのでしょう。ただ英語圏には、「kuvikas」に相当する「サマー&ウィンターウィーブ」という名称がありますから、普通はきっと、そっちを使うのでしょうね。日本でも?

2 件のコメント:

i.asaoka さんのコメント...

こんにちは

kuvikasは、綜絖の通し順などから、アメリカのサマー&ウインターと「同じ組織」だろうと思っていました。
アメリカの文献などを見ると、サマー&ウインターは、地糸を細番手にするなどの糸使いがオーバーショットとほぼ同じです。
kuvikasについてはほとんど知らないのですが同じような糸使いですか?スウェーデンの本の写真を見ると糸使いが違うように見えるのですが・・・。

どの名前を使うかですが、布の持つ表情・・・素材や密度など関係しますから、最初に覚えた時の名前を基本にするのがよいのでは?といつも思っています。
米国のサマー&ウインターの話や名前の由来は、The Shuttle-Craft Book of American Hand-Weaving で知りました。

スウェーデン織専門のお教室はあるのですが、一般のお教室で米国の手織を区別して教えたり、個人で織っていたりする方は数少ないようです。
日本で、「クビカス」「クヴィカス」という名を使う方が多いとしたら、やっぱり北欧の手織りをしている方が多いということですね。

Kuukkeli (くうっけり) さんのコメント...

こんばんは。

kuvikasも緯糸で模様を織りだす組織なので、模様を織りだすための緯糸は、地糸よりも太い、あるいは2本どりだったりということが多いと思います。スウェーデンの本ではどんな感じだったのかしら。

The Shuttle-Craft Book of American Hand-Weaving を見てみましたが、どうやらS&W とkuvikas の考え方が全く同じというわけでもなさそうです。kuvikas のほうが S&W よりも広義かもしれません。

名称は、最初に覚えたものが自分としてはしっくりくるというのはありますね。でも、本によって、あるいは人によって使う名称が違うこともありますから、それらを知っておくのは必要なのかな、と思っています。とはいっても、フィンランド語以外の名称はあまりよく知らないのですが。

それでも正直言うと、北欧の織りとか米国の織りとかを別個に考えたことはないんです。布そのものよりも、どちらかというと織りの組織…構造の視点から織りを考えてしまうからかな…

スウェーデン織りというのも実はよくわかってなくて…スウェーデンの機を使うことなのか、いくつかの特定の組織をいうのか、デザインをいうのか…

自分が北欧にいるから、逆に北欧が見えないのかもしれませんね。

@tapionokuni