この言葉、フィンランド語ではいつも複数形。一台の機をさす時でも複数形を使うのです。
まあ実際、フィンランドの機って複数の木でできてはいます。さらにそれらは分解ができるようになっているのが一般的。
Kangaspuut(Kangaspuut, osina) 分解した機 画像元: kangaspuut | Kansallismuseo | Finna.fi ライセンス: CC BY 4.0 |
だからなおさら、複数形の感覚なのかも。
さて、機といってもいろいろ。
フィンランドの機といわれて、真っ先にイメージするのは、天秤式とかカウンターマーチ式とかといわれる、このタイプのものでしょうか。
Aili Kiiski mattoa kutomassa Kurkijoen Särkijärvellä クルキヨキのサルキヤルヴィでマットを織るアイリ・キースキ 撮影:Kyytinen Pekka, 1930年代 画像元: Aili Kiiski mattoa kutomassa Kurkijoen Särkijärvellä | Museovirasto - Musketti | Finna.fi ライセンス: CC BY 4.0 |
でも実は、そのタイプの機がフィンランドで普及したのは20世紀の話。それまでは、というか古い機を使い続けてきた人たちはそれ以降も、滑車式とかカウンターバランス式といわれるタイプの機( 《PYÖRÄSKANGASPUUT》カウンターバランス式の手織り機 - 手仕事@タピオの国) が主流だったようです。つまりこういう機。
Iäkäs nainen kutoo räsymattoa kangaspuilla. 老女が裂き織りマットを機で織る 撮影:Poutvaara Matti, 1945年 画像元: Iäkäs nainen kutoo räsymattoa kangaspuilla. | Museovirasto - Musketti | Finna.fi ライセンス: CC BY 4.0 |
昔は、機の形も家庭や地域によってさまざまでした。
Kangaspuut käytössä 機 使用中 撮影:Niilo Helander, 1943年8月 画像元: Kangaspuut käytössä | Sotamuseo | Finna.fi ライセンス: CC BY 4.0 |
次の写真の機は上の機より新しそうに見えます。撮影年不明なので何とも言えませんが。
kudontaa kangaspuilla 機での織り 撮影:Aarne Pietinen Oy, 撮影年不明 画像元: kudontaa kangaspuilla | Museovirasto - Musketti | Finna.fi ライセンス: CC BY 4.0 |
何十年か前、こんなふうにワープビーム高い位置にあるタイプの機が Normalo という名の機製造メーカーによって作られていたようです。ただし、この機がそのメーカーのものかどうかは不明。
一方で、古いタイプの機の中に、こんなのもあるのです。
Tomma Jeremieff kutoo kangasta pelsimillä トンマ・イェレミエフが pelsimet(機)で布を織る 撮影:Vahter Tyyni, 1930年 画像元: Tomma Jeremieff kutoo kangasta pelsimillä | Museovirasto - Musketti | Finna.fi ライセンス: CC BY 4.0 |
織り手から見て奥のほう(経糸が巻かれている方)には、機にしっかりと足がついています。でも織り手側の方は、部屋に取り付けられたベンチによって支えられています。その場所に固定するための脚のようなものは付いていますが、機を支えているのはベンチ…つまり部屋に備え付けの家具!!
このタイプの機は、loukkupuut とか pelsimet というんだとか。
さらに、こんな機が使われていた地域もあるそうな。hakokangaspuut っていわれる機です。
Kangaspuut 機 絵:Sjöström J., 1894~1895年 画像元: kangaspuut | Museovirasto - Musketti | Finna.fi ライセンス: CC BY 4.0 |
床と天井の間に立てられた2本の柱状のものがワープビームを支えています。そして、そのそれぞれの柱と壁が横棒でつなげられ、その上にが筬框や綜絖を吊り下げる為の棒が横たわった作り。さらに、前出の機 peltimet と同じように、部屋に備え付けのベンチが支えとして活用されています。…機が家と一体化してる!?
フィンランドという小さな国の中でも、いろいろなタイプの機が使われてきているんですよね。名称も時代や地域によって違うし。でも今の時代は共通語が幅を利かせているし、機もメーカー製造のものが主流。地域による機の名称や形の違いは、もうほとんどないんだろうなあ。
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だいぶ前にこのブログに織りの用語集というページを作りました。本を読んでいるときに出会った、織りに関する用語をメモしていくつもりで作ったものです。
その後しばらく放ってありましたが、リニュアールしてまた活用していこうと思っているところ(このページ 織りに関する用語集)。そして、自分の思考の整理も兼ねて、ブログにも時折、それぞれの用語について記事を書いていこうかと考えています。(この記事もその中の一つのつもりで書いてみました)
フィンランド語講座にするつもりはありません。でも、くうっけりの知っている織りに関する用語はフィンランド語が出発点。「フィンランド語のこの言葉を日本語で何ていうんだろう…」という思考回路なのですよ。そんなわけで、どうしてもフィンランド語の用語を使うことになります。ご了承くださいませ。
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12 件のコメント:
フィンランドでついカード織りの本を買ってしまったので、織り用語集は助かります(笑)。
そういっていただけると、大手を振って?!フィンランド語使えます ^^
ただ、用語の更新はのんびりゆっくり。お役にたてそうな用語が登場するのはいつになることか…
そういえば、カード織に関する用語はまだ一つもピックアップしてないし…(-_-;)
もしよろしければ、購入された本の名前を教えていただけますか?
お役にたてそうな用語を少しはピックアップできるかもしれないので。
どんな物語だったかもう覚えてないですけど。
海から流れ着いた流木で、妻に織り機を作ってやったという。
たしか北海方面の寒い地域の物語だった気がする。
たぶん難破船の板切れなんだろうなと思った覚えがあります。
この古い織り機の写真を見て、いかにも家人の手作りそうな感じがあるので、
そんなことを思い出しました。
アイスランドとかシェットランドとか、小さい島で森林がほとんどないとか…
そんな地方で十分にありそうな話ですね。
そういう物語は今まで聞いたことはなかったけれど、なんかイメージできちゃう気がします。
私のイメージは、板切れではなく木の形そのままかな。
その場で手に入るものだけで、生活必需品を作っていた昔の人って、ほんとすごいって思います。
ありがとうございます!
LAUTANAUHAT
って本です。
http://riko122.blog.fc2.com/blog-entry-897.html
に表紙画像も載せています。
Rikoさんだったんですね♥
その本、知ってます。すごくいい本ですよね。
英訳したらもっと売れるだろうに…
近々図書館から借りて、拾えそうな単語があるかどうかチェックしてみます。
あと、リクエストがあればどうぞ ^^
それとは別に、もし、本の中身で具体的に知りたい部分があれば、連絡フォームからメッセージをください。そうすれば、本の著作権とか気にせずメールで返信できるので。
ちなみに、lautanauhat は「(複数の)カード織バンド」のことです。(単数形が lautanauha で、-t がつくと複数形)
副題の方はその通り!
あれ、すみません、名前入ってなかったんですね…。
いえいえ、お気になさらずに ^^
ちょっと分かりにくいですもん、Bloggerって。
Bloggerのプロフィールを書いて公開しておかないと名前が入らないみたいですね。
Googleアカウントが選択されていたので、名前が入っているものだと思ってたんですよ…。
やっぱりいい本ですよね!文章は全然読めないのに、いい本のにおいがぷんぷんしてました!(笑)だれか和訳して出版してくれませんかね。英訳でもいいです…(英語苦手ですが、フィンランド語よりは…)。
どこかの出版社が翻訳権を買ってくれればいいんですけどね。
そういうことをしてくれそうな出版社にアプローチしてみるっていうのはどうでしょう?^^
遡ると腰機みたいで、世界共通になるのかな?
服を誂えることがとても特別なことだということを、織って改めて実感しました。
長い冬の間にできる手仕事のひとつとして、当たり前にあったのでしょうね。
そうですね、経糸が傾斜して張られているところなんかは、腰機っぽくも見えますね。
でも意外なことに、フィンランドにはどうも腰機の歴史はないみたい。
フィンランドでより古い機というと、垂直型の織り機ってことになるようなんです。
昔は、自分で衣服を作らないと、衣服が手に入らなかったというのもあるのでしょうね。
糸を紡ぐのも布を織るのも、一昔前までは、生活に欠かすことのできない、ごく当たり前の作業だったのだろうと思います。
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