手織り・染色・手紡ぎ等々、手仕事の記録です。フィンランドでのものづくりについても紹介しています。フィンランド発信。

《KANKAANKUVA》組織図

フィンランド語って字数たっぷりの単語が多いです。でも、そういうのはたいがい複合語。

kankaankuva もそんな単語の一つ。kankaan(小難しくいうと「布」を意味する単語 kangas の属格) は「布の」という意味。そして kuva は「絵・図」のこと。だから kankaankuva は「布の図」の意味になります。

具体的には、例えばこんな図のこと。


日本語では「組織図」とか「意匠図」とか、古い本などで時に「指図」なんていわれる図のことです。

縦にならんだマス目1列は経糸1本に対応、横に並んだマス目1列は緯糸1本に対応します。そして、ひとつひとつのマスは、それぞれ経糸1本と緯糸1本が交差している点。

経糸と緯糸の交わり方って、布全体を見るといろいろありにそうに見えます。でも、1本の経糸と1本の緯糸が交差する一点に注目すると、交わり方は、経糸が上か緯糸が上かの2種類しかない。だからその2種は、マス目を塗るか塗らないかで表すことができるんですよね。で、一般には、経糸が上になっている場合はマスが塗りつぶされ、緯糸が上になっている場合は白のまま。

…なんて下手な説明よりも、図を見たほうがわかりやすいですよね。

横井寅雄著『實用機織法 前編』p.11より
(参考:http://www2.cs.arizona.edu/patterns/weaving/books/jh_weav1.pdf

ところで、経糸が上になっている場合塗りつぶすというのは、あくまで一般的にはそうだということです。絶対的な決まりではありません。

フィンランドで使われているのはこの一般的な方法。つまり、経糸が上になっている場合にマスを塗りつぶす。くうっけりもそうです。最初に習ったのがそれなので慣れていることもありますし、この方法のほうが合理的だと思っているから。

でも、スウェーデンの本の場合は逆。緯糸が上になっているマスを塗りつぶしているみたい。これはこれで、特に緯糸で模様を織り出すような組織の場合には見やすい描き方でしょう。

要は正解はないということ。自分で描くときには自分が分かりやすい方法を選べばいい。本にある図の場合には、その本での描き方はどっちなのかを確認すればいい、というだけの話。

ただ最近は、黒マスは経糸が上なのか緯糸が上なのか…なんて迷うことはあまりないかも。近年はパソコンで描かれた図を目にすることが多いし、自分で描くときもパソコンを使うという人が増えていると思うので。

パソコンだと、カラーも使えるしマス目を塗りつぶしたものよりもずっと見やすい図が描けます。もちろん使うソフトにもよりますけど。

最初の組織図だってこんなふうに描けば、どっちが経糸でどっちが緯糸なのかは一目瞭然です。


でもこれって、織りの教科書にあるようなマス目の図ではないですね。けど、表していることは同じ。だからこんな図も組織図っていっちゃっていいのかな。教科書にあるような「組織図」とは姿かたちがちょっと違うけど。

参考ウェブサイト・ウェブページ

今回図を引用した『實用機織法』という本は、こちらのサイトで見つけたもの。


このサイトには、テキスタイル関係の様々な資料が集められています。その多くは著作権の切れた古いもの。でも中には、著者の許可を得てPDFされた比較的新しいものも。例えば、Peter Collingwood氏のラグの本とか。とってもおすすめなサイトです。

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4 件のコメント:

Takemomo さんのコメント...

デジタルアーカイブのサイト、ありがとうございます!
時間をかけて読みます。

組織図の書き方だけじゃなく、織り機に関する用語でも地域性があるみたいですね。
織に関する言葉を覚え始めたとき、その違いがわからなくてかなり混乱しました。
もしかしたら方言のように、産地ごとに違うのかも?と思うようになりました。

karamatsu さんのコメント...

はい、なるほどよくわかりました。
書いていただいてありがとうございます。

としか言いようがなく・・・( ̄▽ ̄;)、いや、もちろん良くわかりましたとも。

わかりやすくうまく書くもんだなー・・・とそっちのほうを感心してました。

くうっけりさんて母語は日本語だろうけど、意思疎通できる言語は、お住いのフィンランド語のほかに英語?そのあたりならドイツ語?、よもやロシア語も?

私は、組織図を布を織るための言語だと思ってるし、楽譜は音楽を伝えるための言語たと思ってるので、くうっけりさんは加えて手織りの言語。

マルチな言語野ですねー(感心)

Kuukkeli (くうっけり) さんのコメント...

用語はほんと多様。
フィンランドだってそうですよ。
時代によっても違いがあるみたいだし、方言まで入れると、同じことを表すにもほんといろいろな言いかたがあります。共通語や教育の普及である程度は統一されてきてはいるけれど、今でも地域によって違う言い方することは珍しくないです。
フィンランドでさえこうなので、フィンランドよりもずっと人の多い日本で違いがあるのはごく当然のことなのかもしれません。

Kuukkeli (くうっけり) さんのコメント...

いやはや、そんなに買い被っていただいちゃって… (・・*)ゞ

残念ながら実態は…

組織図と楽譜は一応読めますが、
日本語は母語だけど日常的には使っていないのでブログを書くことで現状維持に努め、
フィンランド語は日常語だけど文を書くのは苦手で、
英語はどうしても必要にせまられたときだけ片言で話すぐらいで、
ドイツ語は識別しかできなくて、
ロシア語はアルファベットも読めませぬ… (-_-;)

@tapionokuni