1944年といえば、世界的には第2次世界大戦も終盤の頃。フィンランドでは、1941年に始まったソ連軍との戦争…継続戦争がこの年の秋に終わりました。
何月にこの本が出版されたのか分からないので、それがまだ終戦前だったのか、あるいは終戦後だったのかは不明。でも、中身を見る限り、まだ戦時色はあせていない感じ。例えば、経糸のワープビームへの巻き方の説明の中に、こんな文がありました。
Luja ja uppoamaton loimitukki on kuin suomalaisen itsensä perikuva: oikeassa tehtävässä peräänantamaton. (糸が沈み込まないようにしっかり、固く巻かれたワープビームは、正義の前ではひるまないフィンランド人自身の姿のようです)
出版が終戦前だったにしろ終戦後だったにしろ、物が手に入りにくい時代だっということは明らか。
本の外装自体もそんなに立派なものじゃありません。ペーパーバックで、ページ数は48。「本」というよりは「冊子」って感じ。
中身のほうはこんなふう。用途に応じた服地組織と、それを織るために適した素材や、必要な糸の量について具体的に書かれています。
教本ではないので、組織ごとじゃなくてあくまで用途ごと。本の項目をいくつかあげてみると…
- 女性用冬服地
- 裏地なしの夏用コート地
- 紳士服地
- 女性の散歩用服地
- 男性用・女性用の冬用コート地
- 子供服地
- …
当時、今と比べればまだ手織りの伝統は残っていたでしょう。でも、物が手に入りにくいということが、改めて家庭内の手織りを復活させたという側面もあるようです。
本で紹介されている織組織は、綾織のバリエーションが多い。綜絖数は4〜8枚。特に変わったものはありませんでした。まあ、それは当然かもですね。自分の家族のために織る女性が対象読者でしょうから。
この本で興味深かったのは、組織よりも素材です。
この時代に一番手に入れやすかったのはリネン。自分の家で育てている人もいたでしょうし。
手には入っても、リネンほど豊富ではなさそうなのがウールや獣毛。
この時代に一番手に入れやすかったのはリネン。自分の家で育てている人もいたでしょうし。
手には入っても、リネンほど豊富ではなさそうなのがウールや獣毛。
一方でコットンは手に入らなかったようです。本の中では、もの不足前の時代の残り物のコットン糸を素材として使ってはいましたが。
紡いで素材を作ることについては、ところどころに助言がありました。
例えば、リネンとウールの混紡の仕方: リネン繊維を数センチの長さにカット(ウール繊維の長さに揃えるためと思われます)。ウールと混ぜてカーディング、そして紡ぐ。
あるいは、紳士用の服のための糸: きっちり強めに撚って双糸にする。
素材の用途でなるほどと思ったのは、作業着用の布地素材についての助言。もし作業着を室内だけで使うのならリネン100%で問題はない。でも、屋外用の作業着なら、ウールか獣毛も使うべき。でないと布がすぐ濡れてしまう。
もし、経糸がリネンで緯糸がウール、組織が片面斜文であれば、屋外用の作業着は緯斜文(ウール糸が目立つ側)を表にして縫う。そのほうが濡れにくいから。同じ布で室内専用の作業着を縫うなら、緯斜文を裏にして縫う。そのほうが暖かいから。
紡いで素材を作ることについては、ところどころに助言がありました。
例えば、リネンとウールの混紡の仕方: リネン繊維を数センチの長さにカット(ウール繊維の長さに揃えるためと思われます)。ウールと混ぜてカーディング、そして紡ぐ。
あるいは、紳士用の服のための糸: きっちり強めに撚って双糸にする。
素材の用途でなるほどと思ったのは、作業着用の布地素材についての助言。もし作業着を室内だけで使うのならリネン100%で問題はない。でも、屋外用の作業着なら、ウールか獣毛も使うべき。でないと布がすぐ濡れてしまう。
もし、経糸がリネンで緯糸がウール、組織が片面斜文であれば、屋外用の作業着は緯斜文(ウール糸が目立つ側)を表にして縫う。そのほうが濡れにくいから。同じ布で室内専用の作業着を縫うなら、緯斜文を裏にして縫う。そのほうが暖かいから。
ものが手に入りにくかった時代は、限られた素材をそうやって上手に使い分けていたのですね。
さて、最後に広告をご覧ください。枠で囲んであるのが広告。写真には3つありますよね。その中で、一番大きいのはウールを取り扱う会社のものなのですが…
広告テキストの内容が
ルイユ用糸(太めで比較的撚りの強い毛糸)はまだ当社から購入できませんが、情勢が改善すればまた購入していただけます。そののち、いろいろな緯糸用の糸も購入していただけるようになります。現在は、羊毛と古布を、布や毛布や糸やフェルト靴に交換いたします。羊毛、買い取ります。
時代だなあ…
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