もう何年も前の話になりますが、フィンランドでの博物館で、人毛で作られた飾り…ブローチとか…を初めて目にしました。人毛が素材ということに、気味の悪さも感じたものの、人毛で緻密に作られた品々に感心した記憶があります。
また、別の博物館で、髪で刺繍された風景画を見たことがあります。人毛1本どりで、とても細かく刺繍されていました。
人毛をそんなことに利用する文化があるなんて、くうっけりは全く知らなかったので、どちらの博物館でも、ちょっとしたカルチャーショックをうけたのでした。
…というのがずっと前の話なのですが、最近、図書館で、伝統工芸に関する本が並んでいる棚を物色していて、こんな本を見つけました。
Kristiina Nimeminen著『Hiuskorut - Historiaa ja tekniikoita -』 Loimaan ammatti-instituutti/Medialabra出版 2007年 |
書名をフィンランド語から直訳すれば、「ヘアジュエリー ~歴史と技術~」となりましょうか。ただ、ヘアジュエリーというと髪飾りを連想しちゃいますよね。
で、調べてみると、英語ではこれらの工芸(品)を、ヘアジュエリーではなく「hairwork(ヘアワーク)」というらしい。
で、「hairwork」で画像検索すると、この本で取り上げられているようなヘアワークの写真を見ることができます。(でも、複数形にはしないでくださいね。語尾に s をつけると、なぜか全然違う写真が並びます。カタカナでの検索もだめ…サロンばかりがあたります)
この本の内容は書名そのままです。本には、ヘアワークの歴史、そして、ヘアワークの制作過程・方法について書かれています。
深く詳しくというわけではなく、概要レベルですが、ヘアワークについて何も知らなかったので、くうっけりにはちょうどいいぐらいの情報量だったかもしれません。
ヘアワーク自体の歴史は長いようですが、特に流行したのは19世紀から20世紀の初めにかけてだそうです。その頃はフィンランドでも、上流階級の女性のたしなみとして、ピアノの演奏や刺繍などとともに、身につけるべき技術の一つであったそう。
かといって、広く作られ使われていたかといえば、それは疑問です。そのことについては、本には特に何も書かれていないのでわかりませんけれど。
少なくとも、現代人にはあまり知られていないんじゃないかなあ。この本の表紙を見た夫なんて、「ホロコーストの時代の話か?」なんて、怖いことを言ってましたよ。ユダヤ人の人毛利用の話だと思ったらしい。
くうっけりが思い出したのは、「賢者の贈り物」という物語。妻デラが、懐中時計の鎖を夫ジムにプレゼントしようと、髪を売ったというあの話です。
売られた髪が何に使われるのかなんてことは深く考えたことはなかったけれど、物語が書かれた当時、人毛には、ヘアワークの素材としても需要があったんですね、きっと。
そういえば、ヘアワークでよく作られていたものの一つが、懐中時計の紐だそう。デラの髪は何に使われたんだろう? 懐中時計の紐になった??? …なんてことだったら、かなり皮肉な話になりますな。
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