手織り・染色・手紡ぎ等々、手仕事の記録です。フィンランドでのものづくりについても紹介しています。フィンランド発信。

【本】Sidoksia kankaisiin 〜今までとはちょっと違った組織の教科書〜

相変わらず織り組織の本ですが、時代は下りまして、21世紀!!出版のものです。

Elsa Silpala著『Sidoksia(組織を) kankaisiin(布へ)』…なんてそのまま訳を書くとヘンテコですけど。

『Vipupuilla(天秤式カウンターマーチ機で), vetopuilla(ダマスク機/ドロールームで) ja(そして) poimien(ひろって/すくって)』という副題がついています。


出版は、天下の Opetushallitus!!……フィンランドの文部省(文科省?)管轄のお役所です。
初版が出版されたのはおそらく2002年か2003年。なぜにおそらくなのかといいますと、手元にある本(多分初版)には、どこをどう見ても出版年が見つからないんです。ミスプリですかね。さすがは?!役所仕事…

著者は、専門学校で長い間織りを教えていた教師。この本は、彼女が学校で実際に教えていたことがもとになっています。

従来の組織の教科書とは、内容がちょっと違います。視点も違うかも。

他の組織の教科書に書かれているような内容も取り扱われてはいますが、この本の中で何と言っても興味深いのは、ろくろを使って織りだすことのできる組織について書かれている部分。それらは、従来の教科書には、まったく取り扱われていない内容です。

ろくろ式の機ってフィンランドにはほとんどありませんから(少なくともくうっけりは一度も目にしたことがありません)、この本では、天秤式の機に取り付けて使うタイプのろくろが使われています。

こんなのです。


枠の上部を2か所、天秤を止める鉄の棒(ロッド)に通す、あるいは結び付けて使います。

これは機に取り付けた状態…以前の記事の写真の使いまわしですが。


こんな形ですが、しくみとしては一段ろくろ。ろくろは2本なので、4枚の綜絖を吊り下げることができますが、二段ろくろのシステムにはなっていないというところがポイントです。

本には、この装置でピックアップも利用しながら織れる組織の数々が紹介されています。そしてその多様な可能性に、くうっけりはちょっとしたカルチャーショックを受けたのでした。本の中には、3本ろくろや4本ろくろの例もありますが、2本のろくろで十分いろいろな組織が楽しめることがわかります。

織れる組織の数だけでなく、この本で紹介されているピックアップの二重織り(フィンランド語では täkänä、日本語ではフィン織り?)の方法にも感動しました。最初に習った täkänä の織り方(2本の棒状のスティックを使う方法)よりも、ずっとずっと分かりやすいし、手間もずっと少ない。最初に教わったのが、なぜにあんなに手間がかかる方法だったのかと、すごく不思議に思うぐらいです。

一段ろくろという比較的簡単なシステムを使ってピックアップも併用しながら、様々な組織を実際に織ることで、織りの初心者が織りの組織を具体的に理解できるように…ということも考えられているようです。そしてその流れが、特殊な機…ダマスク機やドロールーム(drawloom)…のしくみにも自然につながっていきます。

ということで、この本には、特殊な機のしくみと、それらを使った織りについて、独立した章として書かれています。他の組織の本では、特殊な機についての説明は、ごく簡単になされているぐらいのものなので、そういう点でも、他の組織の教科書とは大きく異なります。

この本でとにかく面白いと思うのは、そのオリジナル性です。従来の考え方に縛られていないところがすごいと思うのです。

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@tapionokuni