でも、とある本を見ていて気が付きました。アカヒダササタケで染めたセルロース系の糸には、下地処理をしていないのにもかかわらず、それなりの色がついているということに。
そこで、実際に試してみることにしました。
アカヒダササタケ
このキノコのいいところは
- この辺りの森林にはよく生えており、手に入れやすい
- 乾燥させやすい=保存しやすい
- 身近な草木からはあまり得ることのできない、赤系の色を得ることができる
というところでしょうか。そんなわけでくうっけりも森林の散策中、このキノコが目についたときには度々摘んで、乾燥させて保存しています。そして、今までにも何度か、このキノコを使っての染色をしています。( 手仕事@タピオの国: アカヒダササタケ)
今回は在庫にあった92gの乾燥アカヒダササタケを使いました。染めたかったセルロース系の糸は、190gほどです。
本命は、そのセルロース系の糸…亜麻と木綿の交撚糸を染めるということでしたが、これだけキノコがあれば、もっと染められるだろうと踏んで、羊毛系の糸も何綛か染めてみることにしました。
水抽出の染色液で
乾燥アカヒダササタケを一晩水につけておいたら、それだけでも水がかなり色づいていました。そこで、まずはその液を染色液として、ミョウバンで先媒染したウールとポリアミドの混紡糸を染めてみました。
この液で染色してみたのは、低温で出た色で染色するのと、熱を加えて出た色で染色するのとでは、もしかして色合いに違いがあるかもしれない、と期待したからです。でも、こうして見る限り、普通に煮出して染めた時の色合いと、あまり違いはなさそう。
亜麻と木綿の交撚糸を染める
今回の本命の染色です。
上記の染色に使った液にキノコを戻し、水を弱アルカリ性にして煮出しました。そして、煮出した一番液と二番液を合わせて、液を中和してから染めました。糸の下地処理はしていません。
毛糸のようには染まらないことはわかっていたので、染色とミョウバンでの媒染を3回繰り返しました。3回目の染色においては、一晩染色液につけたままにもしておきました。
コーン巻のもとの糸と、染色した糸を比べてみます。
お~ なかなかいい色に染まったじゃないですか!羊毛系の糸に染めた時より、かわいい色合いかも。
コーン巻のもとの糸と、染色した糸を比べてみます。
お~ なかなかいい色に染まったじゃないですか!羊毛系の糸に染めた時より、かわいい色合いかも。
ウールとポリアミドの混紡糸を染める
まだ染まるだろうと思ったので、同じ液で、ミョウバンで先媒染したグレーの糸(写真右下)と、ルバーブの葉で処理しておいたベージュの糸(写真左上)を染めました。元の糸の地色が影響してこんな色になりましたが、
試しに入れておいた、ミョウバン先媒染の白い糸は、オレンジ~明るい茶色に染っていました。
鉄媒染をしてみる
染色液が少し減ってしまったので、煮出したキノコに水を少し入れ、再び煮出してその液を足しました。
今まで何度かアカヒダササタケでの染色をしたことがあるけれど、そういえば、鉄媒染を試したことがなかった…
ということで、シメは鉄の後媒染で。
鉄媒染をすると、色合いが暗くなりますね。鉄媒染無しだと、これもオレンジ~明るい茶色のような色だったと思われます。
染めた糸は全部で…
今回染めた糸を並べてみました。
乾燥アカヒダササタケ92gから、これだけの糸(450g弱)に、これだけの色をいただくことができました。乾燥キノコは偉大ですな。
2 件のコメント:
はじめまして、伊藤と申します。
まだフィンランドでキノコ染めはやっておられますか?
キノコ染めの歴史を調べていて、もしよろしければ、
キノコ染めをどこでいつ学ばれたかを教えていただけないでしょうか?
お返事いただけると幸いです。
伊藤様
このところ染色はしていません。やめたわけではないのだけれど、ほかのあれこれにかまけておりまして… あくまで趣味なので、やるかどうかは気の向き次第なのです😓
キノコ染めのことを知ったのは1990年代の中ごろ、テキスタイル関係の専門学校に通っていた時です。でも特に「キノコ染め」を習ったというわけではありません。草木染の実習のなかで、よそのグループの子がキノコ染を使ってました。そのときにキノコでも染色できるのだということを初めて知りました。
自分でキノコ染めをするようになったのは、それよりずっと後のこと、2007年ごろです。特にどこかで学んだわけではなく、情報源はフィンランドで出版されている本とインターネットでした。特に参考にしていたのは1983年出版の「Sienivärjäys」(キノコ染め)という本。スウェーデン語で書かれた「Färga med svampar」の翻訳本です。
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